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【ラヴズオンリーユー】
惜別と歓喜のラストラン

2021/12/12　香港カップ(GI) 1着

最後の直線、ラヴズオンリーユーは内へ押し込められました。ゴールまで残りわずか400ｍ。苦しい態勢となり万事休すかと思われましたが、鞍上は慌てませんでした。一呼吸置いて進路が空くのを待つと、先に抜け出したロシアンエンペラー、外から一気に進出してきたヒシイグアスを捕らえにかかります。最後の100ｍで2頭の間を割り、最後は頭だけ前に出ていました。

「非常に厳しいレースでした。それでも馬が頑張ってくれました。名馬です。この馬のラストランの背中にいて、勝つことができて本当に幸せです。正直ギリギリの戦いで流れも良くなく、危ないところもありましたが、それが1番人気馬の宿命なので焦りはありませんでした。期待に応えられて本当に良かったですし、このチームにいられたことを誇りに思います」。引退レースを勝利に導いた川田将雅騎手には、安堵の色が浮かびました。

「感動しました。すごい馬です。自分が信じた道は何があっても進んでいくんだと教えてくれました」。矢作芳人調教師は興奮の面持ちで振り返り、そして続けました。「本当はもっと走れると思います。でも惜しまれながら、強くてたくましいまま別れを告げるのもいい形だなと思います。世界中の競馬ファンがこの馬の子供を楽しみにしています。どんな大きな夢を描いてもラヴズなら叶えてくれる気がしてなりません」。寂しさをのぞかせながら、次の舞台へと思いを馳せました。

3歳時にオークスを制し、5歳の今年はクイーンエリザベス2世カップ、ブリーダーズカップフィリー＆メアターフ、香港カップと日本調教馬初の海外GI年間3勝の大記録を打ち立てました。強烈な余韻を残したまま、ラヴズオンリーユーはターフを去ります。次は母としての大きな仕事が待っています。果てしない夢と可能性を乗せて生まれてくる子供たちの走りが、今から楽しみでなりません。